事務所通信

2025年

事務所通信2月号

経営:あらためてチェックしてみよう! 健全経営を支える経理の「きほん」

 中小企業の経理担当者は、総務・人事・労務など複数の業務を兼務するケースが多いことでしょう。さまざまな業務をこなし、毎日の限られた時間の中では、記載事項等に不備のある証憑書類(領収書・請求書等)が回ってきても、「時間もないし……まあ、いいか」と目をつぶってしまいかねません。
 けれども、実はそうした「まあ、いいか」は御法度です。日々の経理処理は、事業の実態をタイムリーに、かつ正確に把握するベースとなるもの。不確かな経理処理の積み重ねによってできあがる試算表や決算書は、当然、あいまいで不正確なものになり、その結果、社長は最適な経営判断を下すことが難しくなってしまいます。
 また、「経理処理の不確かさ=お金の管理の甘さ」は、会社全体のモラルを低下させ、「公私混同」や不正を招く要因にもなります。経理処理こそ「基本に忠実」が重要です。あらためて自社の経理体制を見直してみましょう。また、適時・正確な経理処理のためには、①全従業員の協力②人為的ミスを減らす/防ぐ仕組みの導入(ダブルチェック体制の導入・業務の自動化)――も大切です。

会計:きちんと実施していますか? 「棚卸」

 「棚卸」(実地棚卸)は、会社が保有する棚卸資産(商品、製品、仕掛品、原材料等)を数えて正確な数量や品質を確認する作業です。実地棚卸は、①正確な決算書の作成②適切な在庫管理③適正な税務申告――といった観点から、正しくかつ定期的な実施が求められています。
 ①正確な決算書の作成:当期に仕入れた商品・製品等でも来期以降の売上に対応するのであれば、当期の売上原価にはならず、期末在庫(棚卸資産)となります。当期の売上高に対応する売上原価を計上することで正しい損益や資産が正確に決算書に表示されます。
 ②適切な在庫管理:実地棚卸は、過剰在庫や不足在庫、商品等の破損・紛失等を発見することができる絶好の機会でもあります。発注量の調整や不良在庫の処分等、適切な在庫管理のために必要な情報を得ることができます。
 ③適正な税務申告:「棚卸の計上漏れ=所得の過少申告」となるため、税務調査で確認される事項の1つに期末在庫の数量があります。社外の倉庫に預けてある商品や未着商品等のような「社外在庫」の確認はもれやすいため注意が必要です。
 日頃から入出庫管理の徹底や倉庫内の清掃・整理整頓をしておくとともに、決算時に加え定期的な実地棚卸(毎月、あるいは少なくとも3か月に1回の頻度が理想的)を心がけましょう。

労務:人手不足解消に効果アリ!? 「リファラル採用」の特徴と注意点

 「良い人を採用したいけれど、なかなか見つからない……」と、人材採用について悩まれている社長も多いのではないでしょうか。近年、特に若い世代の労働人口が減少しており、採用に関する競争率は格段に高くなっています。こうした中、中小企業でも比較的取り組みやすい採用手法として注目され始めているのが「リファラル採用」です。
 リファラルとは「推薦」「紹介」という意味で、社員等に知人・友人を紹介してもらい、入社につなげるというもの。対象となる人材に直接アプローチできる点が、リファラル採用の最大の特徴です。知名度の高い大企業や地元の同業他社等との競合を避けられる――等のメリットがあることから、リファラル採用は、中小企業こそ試す価値があるといえます。
 リファラル採用に取り組む場合には、会社の制度として規程を設け、社員に周知することが重要です。また、「社員が紹介したくなる良い職場」であることも大前提。採用の仕組みを整えることはもちろん、現社員に対する待遇面の改善等にもきちんと取り組みましょう。

事務所通信1月号

トピック:2025年に変わるヒト・モノ・カネ

 経営資源の3要素「ヒト」「モノ」「カネ」の視点から、2025年に起こりうる変化を考えてみましょう。
 ○2025年に変わる 「ヒト」:75歳以上人口が全人口の約18%(約2,160万人)に
  2025年は、1947年~1949年生まれの団塊世代のすべての人が75歳を迎え、75歳以上人口が全人口の約18%(約2,160万人)になると推計されています。少子化も相まって労働力不足が加速。人の採用がさらに困難になると予想されます。
 ○2025年に変わる 「モノ」:デジタルを活用した「モノ」の進化は止まらない!
  AI搭載家電をはじめ、顔認証機能を利用した無人コンビニや駅改札等も登場している昨今。また、テキスト生成だけでなく画像生成や動画生成等ができる生成AIも登場。今後は「どの生成AIを」「どの場面で」「どのように活用するか」がカギになりそうです。
 ○2025年に変わる 「カネ」:「給与デジタル払い」普及元年に!?
  2024年8月、厚生労働省が「PayPay」を「給与デジタル払い」の事業者に初指定。希望する会社は、一定の手続きのもと、従業員のPayPayアカウントに給与を支払うことができるようになりました。2025年は「給与デジタル払い」普及元年となりそうです。
いずれも、キーワードは「デジタル化」「DX」。しっかり対応して、これらの変化をチャンスへと変えていきましょう。

経営:今年は“筋肉質”の会社をめざそう!

 「健康」な会社の貸借対照表(B/S)は、資金が潤沢で自己資本が充実しており、人の身体に例えると「筋肉質」といえます。
 会社の資金を増加させる方法は、①資本金を増やす②金融機関等から借り入れる③黒字決算によって利益を内部留保する――の3つの方法がありますが、このうち、もっとも確実に資金を増やす方法は「③黒字決算によって利益を内部留保する」です。
 経営者の中には、「収支トントン」としたり、「赤字のほうが納税しなくてすむから得」と考えたりする方もいることでしょう。しかし、赤字経営は、確実に赤字分の資金を社外に流出させ、資金繰りに追われる経営に陥ります。中小企業の法人実効税率は約30%ですから、利益の中から3割を納税しても、残った7割を資金として残すことができます。そのため、「収支トントン」よりも、「利益を出して納税できる経営」をめざすことが重要です。
 自己資本が充実すれば、借入金への依存度が小さくなり、会社の財務が安定します。経済の急激な変化や、パンデミック・災害のような危機への対応力も向上します。借入れによる資金調達をせずに設備や新事業への投資のほか、昇給など従業員の処遇改善に使うことも可能になります。黒字経営によって利益を内部留保し、「筋肉質」の会社をめざしましょう。

税務:令和6年分 所得税確定申告の事前準備のポイント

 令和7年2月17日(月)から3月17日(月)は、令和6年分所得税確定申告の期間です。
 個人事業者は、総収入金額や必要経費を集計して、令和6年分の事業所得の金額を算出します。仕入代金をはじめ、広告宣伝費、運送費、従業員給与、賃借料、減価償却費、水道光熱費、その他事業に必要な費用は必要経費になりますが、事業に関係のない支出は、家事費となるため正しく区分しましょう。また、必要経費と家事費が混在する家事関連費は、原則として必要経費とすることはできないものですが、面積、使用時間等の合理的な方法によって按分し、事業上必要な部分を明らかにすれば、その部分は必要経費となります。
 なお、個人事業者等はもとより、経営者や会社員等の給与所得者でも一定の所得のある人、医療費控除等を受ける人は確定申告が必要です

2024年

事務所通信12月号

税務:今年は「年調減税事務」が必要です 令和6年分 年末調整手続きのポイント

 年末調整は、給与所得者の所得税額を正確に計算し、源泉徴収税額との過不足額を精算する手続きです。令和6年分の年末調整では、6月から実施された定額減税(所得税分:1人あたり3万円)にかかる「年調減税事務」が必要になります。
 年調減税事務においては、従業員から提出された「扶養控除等申告書」や「基礎控除申告書」「配偶者控除等申告書」等をもとに、年末調整時点において定額減税の対象となる従業員、同一生計配偶者、扶養親族の人数等に変更がないかを確認し、減税額を確定します。
 以下に該当する場合には、注意が必要です。
 ○令和6年6月2日以後に採用した従業員
 ○令和6年6月以後、結婚・出生などがあった従業員(同一生計配偶者・扶養親族分)
 ○給与所得以外の所得を含めた合計所得金額が1,805万円を超えた従業員
 ○同一生計配偶者・扶養親族ではなくなった人(就職、離婚、所得が48万円超等) など
 年末調整において確定した減税額等は、「給与所得の源泉徴収票」の「摘要」欄に記載することが必要になります。例年よりも早めに手続きを進めましょう

経営:もっとラクに、カンタンに! 今話題の「請求業務のデジタル化」

 経営において、お金を回収する「請求業務」は非常に大事です。一方で、「納品書等から請求書に転記する際に記載ミス・計算間違いをしてしまった」「取引先から『請求書の内容がインボイスの記載要件を満たしていないので再発行してほしい』と言われた」「請求時に『売れ筋商品』『商品の売れ時』をチェックしたいが、管理が煩雑」といった経験はありませんか。「請求業務のデジタル化」で、これらのミスや手間、コストを削減しましょう。
 「請求業務のデジタル化」には、FXクラウドシリーズ「販売管理機能」が便利です。売上伝票を作成すると同時に①納品書・請求書等が作成できる②仕訳も自動計上される──などの特長があるため、請求書発行時のミス・モレが起きづらくなります。その上、インボイス制度にも完全対応。また、商品ごと・取引先別の販売管理データから「売れ筋商品」「よく売れる月」「安定して入金してもらえている取引先」を「見える化」。「何が・いつ・どれだけ・誰に」売れているかがいち早く把握できるため、販売戦略のヒントがつかめます。
 請求書をPDF化してメールで送信している企業では、よりデジタル化を追求した「ペポルインボイス」の利用も視野に入れてみましょう。請求業務のデジタル化がさらに加速します

事業承継:考えていますか? 「自社株式」の贈与

 「株式の保有者」=「株主」の権利は「財産権」と「経営権」。自社株式の大半を経営者が保有している中小企業では、これらを普段の経営で意識することは少ないかもしれませんが、特に事業承継時には重要になります。「いつ」「どのタイミングで」「どのくらいの株式を渡すのか」について、財産権と経営権を考慮しつつ、長期的な展望で後継者に渡す(贈与する)ことが重要です。自社株式の贈与の前には、①自社株評価②名義株等の整理③株式譲渡制限の有無の確認――をしておきましょう。
 多くの場合、事業承継における自社株式の贈与は「暦年課税制度」「相続時精算課税制度」で行いますが、令和9年12月31日までは、「特例事業承継税制」を活用することも可能です。
 複数年にわたる贈与は、毎年、自社株式の評価を行い、計画性をもって慎重に進めることが必要です

事務所通信11月号

経営:つくってみましょう!「経営計画」

 「経営計画」と聞くと、「なんだか難しそう」と苦手意識を持つ社長もいらっしゃるのではないでしょうか。経営計画は、社長が「来期やりたいこと」を数字に落とし込んだものです。まずは、社長の「来期やりたいこと」を思いつくままに挙げてみましょう。それが経営計画をつくる第一歩です。
 その上で、「来期やりたいこと」を実現するためには、どれくらいの資金が必要になるかを会計事務所と一緒にシミュレーションしてみましょう。そのシミュレーションの元になるのが、①目標経常利益②売上高の伸び③限界利益率(粗利益率)④従業員給与・賞与の伸び⑤従業員数――の「5つの質問」です。「来期やりたいこと」を盛り込んだ、具体的な数字で考えてみると、取り組むべき課題が明確になってきます。
 来期に向けて、経営計画、つくってみませんか。

税務:「年収の壁」扶養の範囲を確認しましょう

 パート・アルバイトで働く人の中には、自身の年収と配偶者の扶養の範囲を意識している人も少なくありません。税金や社会保険の扶養の範囲に影響のある年収のライン、いわゆる「年収の壁」について、従業員に説明しておきましょう。
 【所得税・住民税】
  ○100万円の壁 ▶ 住民税が課税
  ○103万円の壁 ▶ 所得税が課税
  ○150万円の壁・201万円の壁 ▶ 配偶者特別控除の額が段階的に縮小→0に
 年収103万円以下であっても、給与所得以外に副業等の収入があると、一定の場合、一時所得や雑所得、譲渡所得となって、所得税が課税される「103万円の壁」等を超えてしまうことがあるので注意が必要です。
 【社会保険】
  ○106万円の壁 ▶ 社会保険(厚生年金保険・健康保険)の適用
  ○130万円の壁 ▶ 社会保険(国民年金・国民健康保険)の適用
 政府は現在、「年収の壁」を意識せずに働ける環境整備に力を入れています。これからは、扶養の範囲内で働くよりも、世帯収入を増やす働き方を提案しても良いかもしれません。

トピック:考えてみましょう「デジタル資産」の取り扱い

 経済・社会のデジタル化に伴い急速に増えているのが、「デジタル資産」です。写真・動画などのデジタルデータもデジタル資産に該当しますが、中でも注意して管理することが必要なのは、ネット銀行・ネット証券口座の残高、サブスクリプションサービスの利用料金、FX(外国為替証拠金取引)、暗号資産などの、金銭的価値のあるデジタル資産です。
 デジタル資産は管理に必要な情報が運用者(本人)に集中しやすく、他人がその存在や内容を把握することは容易ではありません。また、FXや暗号資産取引など、金額の大きなデジタル資産は、税金の申告漏れ等の税務トラブルに発展することもあります。
 デジタル資産の早期・適切な管理は、家族等の負担を減らすだけでなく、トラブルに巻き込まれるリスクを減らすことにもつながります。今のうちから、①デジタル資産の内容をリストアップする②信頼できる存在に共有しておく――といった対策をとると良いでしょう。

事務所通信10月号

税務:「インボイス」再点検! 免税事業者等との取引

 インボイス制度導入から1年が経過しました。インボイス発行事業者間の取引については、実務上の混乱は少なくなってきましたが、注意が必要なのは免税事業者等との取引です。免税事業者等からの仕入れに係る原則や経過措置を受けるための要件等を再確認しましょう。
 □原則:買手は仕入税額控除ができない
 □経過措置:令和11年9月30日までは一定割合の仕入税額控除が可能
  この経過措置の適用を受けるためには、次のことが必要です。
  ①請求書・領収書等に消費税込みの請求金額・領収金額
   (「区分記載請求書等保存方式」の記載事項)が記載されていること
  ②帳簿に「80%控除対象」など、経過措置の適用を受ける課税仕入れである旨の記載
 記載要件が満たされている請求書等であるかどうか、まずはきちんと確認することをあらためて徹底しましょう。

税務:知っておきたい「生前贈与」のイロハ

 生前贈与により財産をもらったときは、原則として贈与税の納税義務が生じます。その課税方法には暦年課税制度と相続時精算課税制度の2つがあります。
 暦年課税制度は、1年間(1月1日から12月31日まで)に贈与を受けた財産の合計額から基礎控除額110万円を差し引いた残額(基礎控除後の課税価格)に、所定の税率(10%~55%)をかけて贈与税額を計算します。同制度の利用には特段の要件・制限等はありません。
 相続時精算課税制度は、1年間に贈与された財産の合計額を基に、一定の税率(20%)で贈与税を計算して「仮払い」し、相続発生後、贈与された財産を相続財産に加算した上で、相続税額から「仮払い」した贈与税の分を差し引く(精算する)制度です。同制度の利用には一定の要件等があり、同制度を選択した贈与については、暦年課税制度に戻すことができません。
 財産の状況や家族構成、贈与期間等により、どちらの制度が有利であるかの判断は非常に難しく、慎重な検討が必要です。生前贈与をお考えの方は、早めに当事務所までご相談ください。

労務:どうする? 従業員の「副業」

 政府は働き方改革の一環として副業・兼業(以下、副業)の普及を図るという方向性を示しています。企業にとっても、従業員が副業を行うことにより「社内では得られない知識・スキルを獲得できる」「社外から新たな知識・情報や人脈を得ることで事業機会の拡大につながる」等の効果が期待される一方で、①過剰労働や本業に専念できない②業務上の秘密やノウハウが漏洩する③競業により自社の利益が害される④労務管理等が煩雑になる――などのリスクが挙げられます。
 副業自体への法的な規制はありませんが、裁判例では、企業の利益や信頼を損なうおそれがあるときは、副業の禁止や制限することを認めています。したがって、就業規則に「原則として、従業員は副業を行うことができる」とした上で、例外的に副業を禁止、制限する場合の規定を設けるといった対応をすると良いでしょう。就業規則に副業のルールを規定しておかないと、知らないうちに従業員が副業をしていても止めさせることができないおそれがあります。
 就業規則がない中小企業も見受けられます。「副業をしたい」と従業員から申し出があったときに備えて、副業のルールを含めて、就業規則の整備を検討してはいかがでしょうか。

事務所通信9月号

経営:「取引先別管理」で経営の「解像度」を上げよう!

 決算書や試算表を見ていて、「表示されている勘定科目の中身をもっと細かく、リアルタイムで確認したい」と思ったことはありませんか。
 インボイス制度の導入によって、正確な会計処理を行う上で必要不可欠となったのが、自計化システムの導入と、取引先およびそのインボイス番号の管理です。同制度導入を機に定着した取引先別管理を、会計処理だけでなく経営分析にも活かしてみましょう。
 主要勘定科目等(売掛金、買掛金、売上高、売上原価、経費科目等)について取引先別管理を行うと、自社の取引状況や債権・債務の取引先別の残高確認が容易にでき、経営課題や売上・利益アップのヒントをいち早く見つけられるようになります。

 また、売掛金と売上高の取引先別管理に加えて、FXクラウドシリーズの「得意先順位月報」を活用すると、取引先別の詳細な分析ができるようになります。

税務:こんなときどうする? 災害時の税務上の取扱い

 夏から秋にかけては台風シーズン。風水害や地震等により法人の資産が被害を受けたときの損害額や復旧費用、被災した従業員や取引先を支援したときの支出等の多くは、当期の費用や損失として損金とすることができます。災害時によくあるケースを確認してみましょう。
 〇ケース1:被災した自社の従業員等へ災害見舞金品を支給した
 〇ケース2:取引先等へ災害見舞金等を贈った
 〇ケース3:被災地に自社製品等を贈った
 〇ケース4:取引先等へ事業用資産を供与した
 〇ケース5:取引先の売掛金等を免除した
 ただし、被災した取引先等への支援であっても、場合によっては寄附金や交際費等に該当するものもあります。災害時の税務上の取扱いについて判断に迷われた際は、当事務所までご相談ください。

法務:発注事業者のための 11月1日施行「フリーランス法」のポイント

 発注事業者(業務を委託する事業者)とフリーランス事業者(業務を受託する事業者)との取引の適正化等を目的とした「フリーランス法」が11月1日に施行されます。この法律は、原則として事業者間(BtoB)における委託取引が対象で、フリーランス事業者に対して、発注事業者が果たすべき最大「7つの義務項目」を定めています。具体的な義務項目は次のとおりです。
 ①書面等による取引条件の明示
 ②報酬支払期日の設定・期日内の支払
 ③禁止行為
 ④募集情報の的確表示
 ⑤育児介護等と業務の両立に対する配慮
 ⑥ハラスメント対策に係る体制整備
 ⑦中途解除等の事前予告・理由開示
 発注事業者が満たす要件によって、遵守すべき義務項目は異なります。また、もしも義務項目に違反した場合には、罰則が科されることとなっています。施行日までに、必要に応じて業務フローや委託内容等を見直し、スムーズな取引に向けて準備を進めておきましょう。

事務所通信8月号

税務:「雑収入」、正しく計上していますか?

 会社の通常の事業とは関連しない「営業外収益」のうち、少額なものや、たまたまの取引で得た収益は、実務上「雑収入」として計上します。
例えば、不動産等の賃貸収入、保険会社からの契約者配当金、使用しなくなった車両・機械装置等の売却代金、自動販売機による収入、鉄くず・建設廃材等の売却代金、消費税の納付差益・精算差益、代理店手数料――等が雑収入に該当します。
 雑収入は、通知があった時や債権が確定した日に収益計上すべき取引であり、税務調査でも期ずれを指摘されがちです。たとえ少額であっても漏らすことなく、正しく計上しましょう。
 雑収入の判断や取扱いについて迷われた際は、ぜひ当事務所までご確認ください。

経営:会社の将来のために! 貸借対照表の「磨き上げ」を

 1年間の経営成績を表す損益計算書に対して、過去から現在に至るまでの経営努力の結果を示しているのが、貸借対照表です。財産や債務の内容、利益や損失の過去からの蓄積が表れている貸借対照表の「磨き上げ」をして、今から将来に備えておきましょう。

 経営者が最高経営責任者として経営を担った後は、「次世代に事業承継する」「M&Aにより会社を譲渡する」「廃業する」等を選択することになります。ところが、金融機関からの借入金が多額であったり、貸借対照表が実態を表していなかったりした場合には、いずれの選択肢を選んだとしてもスムーズに進まない可能性があります。そのため、今のうちから貸借対照表の「磨き上げ」が必要なのです。自社の貸借対照表を、①不良債権②不良在庫③貸付金・仮払金等④投資等⑤借入金⑥隠れ債務(連帯保証を含む)の有無⑦自己資本――の観点からチェックしてみましょう。

労務:パート・アルバイト等の社会保険加入を考える

 「年収の壁(106万円)」などで話題に上ることが多い社会保険(厚生年金保険・健康保険)。政府はいま、「多くの人に手厚い社会保障を」との方針のもと、社会保険適用拡大の制度改正を進めています。令和6年10月から「従業員数51人以上」の会社が義務的適用となり(現行は「従業員数101人以上」の会社が義務的適用)、次の基準をすべて満たすパート・アルバイトの方が、社会保険の新たな加入対象者となります。
 ①週の所定労働時間が20時間以上30時間未満
 ②所定内賃金が月額8.8万円以上
 ③2か月を超える雇用の見込みがある
 ④学生ではない(休学中、定時制・通信制の方を除く)
 なお、従業員数をカウントする際は、店舗や工場等の複数の拠点を持つ会社では、全拠点の従業員数を合算する必要があることに注意しましょう。
 新たに社会保険に加入した従業員の手取りが減らないよう、手当を支給するなど収入を増加させた場合は、「キャリアアップ助成金(社会保険適用時処遇改善コース)」の活用が可能です(令和8年3月31日までの措置)。

事務所通信7月号

金融:金融機関は融資審査でココを見る!

 融資審査にあたり、金融機関が重視するのは、主に①貸したお金は何に使われるのか?(資金使途)②貸したお金はきちんと返済されるのか?(返済能力)――の2つです。
 金融機関からすれば、「将来、返済するためのお金(返済原資)」を生むものでなければ、融資は難しくなります。そこで融資の申し込みにあたっては、「借りたお金は何に使うのか」「融資実行後、どのくらい利益が生まれるのか」「その利益からいくら返済していくのか」を、社長自身の言葉で説明できるように準備しておきましょう。これらの説明が明確で、かつ具体的であればあるほど、金融機関は融資実行を判断しやすくなります。
 また、年1回の決算書に加え、「TKCモニタリング情報サービス(MIS)」を通じて、定期的に試算表も金融機関に提出するようにしましょう。積極的・定期的な情報開示は、金融機関との信頼関係をより深める「第一歩」です。

税務:その支出、本当に「修繕費」でいいの?

 「修繕費」とは、社屋や工場の外壁塗装、機械や車両のメンテナンスなど、会社が保有する固定資産の通常の維持管理と原状回復にかかる支出を指します。修繕費は、当期の費用として計上することができます。
 修繕費と迷う支出に、「資本的支出」があります。新たな機能の物理的な付加や品質・性能の向上によって、固定資産の価値や耐久性をアップさせるような修理・改良を行った場合の支出が該当します。この場合には固定資産として計上し、法定耐用年数の期間中、減価償却費(費用)として計上しなければなりません。
 なお、税務調査では実際に修理を行った箇所を確認することがよくあります。修理箇所の作業前後の写真や、修理内容がわかる資料を保存しておくと良いでしょう。
 修繕費か、資本的支出か。判断に迷ったら、ぜひ当事務所までご相談ください。

労務:押さえておきたい「残業手当」の基礎知識

 残業手当は、会社が定めた「所定労働時間」を超えて労働させた場合に従業員に支給する賃金のことで、時間外労働手当とも呼ばれます。「法定労働時間(1日8時間、1週40時間)」を超えて労働した従業員に対して、会社は割増賃金を支払わなければなりません。また、深夜や休日の労働には、別途割増賃金を支給する必要が生じます。
 残業手当が支払われないと、従業員の離職につながるだけでなく、訴訟に発展してしまうおそれもあります。「労働の対価」という考え方のもと、適切に支給しましょう。
 また、「なぜ残業が生じているのか」をあらためて考える機会をつくることも必要です。働き方改革が進み、ワークライフバランスが重視される昨今。残業時間の削減は、従業員の満足度向上や定着、採用の強化などにつながります。デジタル活用による「残業ありきの働き方」の見直しもあわせて進めましょう。

事務所通信6月号

税務:給与計算担当者のための「定額減税」取扱いの最終チェック

 令和6年6月から「定額減税」が始まります。所得税の定額減税は、原則として、年末調整時の「一括控除」が認められておらず、月次での対応が必要になります。6月以降の給与計算事務をスムーズかつ適切に実施できるよう、次のことを準備しておきましょう。

(1)控除対象者の確認と減税額の確定

 〇給与計算担当者は「令和6年6月1日」時点で、自社の従業員のうち「誰が」「いくら」減税となるのか──を確定する必要があります。

(2)「各人別控除事績簿」の作成

 〇各従業員の減税額が確定したら、氏名、扶養親族等の人数、合計の減税額を記載した一覧表「各人別控除事績簿」を作成しておきましょう。

(3)給与等の明細書の様式の見直し

 〇定額減税がスタートすると、各従業員の給与等の明細書に、当該給与等の所得税から控除した額を記載する必要があります。事前に明細書の様式を見直しておきましょう。

経営:「交際費」、安易に使っていませんか?

 令和6年度税制改正で、法人税において交際費等から除外される1人あたりの飲食費の基準が5千円以下から1万円以下に引き上げられました。とは言え、会社のお金を安易に使うのは考えものです。

 そもそも「交際費等」とは、得意先や仕入先等、会社の事業に関係のある人に対して、接待や贈答、慰安等を行うために支出する費用。会社の売上や利益の維持・増加、円滑な取引の継続等のために支出するものです。

 そのため、交際費等が使われている実態が、個人的な友人とのゴルフや家族との飲食のような、役員の私的な支出であれば、役員への給与とみなされ源泉所得税が課されることになります。また、会社では損金算入が認められず、法人税等の課税額の増加につながることも。

 「経費になるから」と公私混同はせず、適切な支出を心がけましょう。

税務:デジタル化への対応で税務手続がスムーズに!

 現在、国税庁は「あらゆる税務手続が税務署に行かずにできる社会」を目指して、税務手続のデジタル化を推進しています。中小企業等にとっては、以下のような点で利便性が向上しています。

(1)キャッシュレスで「行かない」納付

 〇e-Taxを利用したダイレクト納付、インターネットバンキングなどを利用すれば、窓口に行く手間や現金管理の事務負担を削減できます。

(2)年末調整の簡略化

 〇「マイナポータル」や給与計算ソフトを活用すれば、煩雑な年末調整の手続きもスムーズに進みます。

(3)個人の確定申告は「書かない」時代に

 〇e-Taxや「マイナポータル」の機能拡充に伴い、給与等の収入金額や医療費の支払額などのデータも自動的に取り込み、入力なしで確定申告を行うことができます。

税務手続のデジタル化は、従業員の対応を含め準備が必要になります。当事務所と一緒にデジタル化を進めましょう。

事務所通信5月号

経営:小さな会社の値決め戦略

 「値決めは経営」と言われるほど、経営において重要な位置を占める価格設定。資源価格や原材料価格の高騰を受け、製品・サービス等のコストは上昇傾向にあります。また、賃上げ機運の高まりもあり、人件費の増加も見込まれます。適正な利益を確保し、日頃、頑張ってくれている従業員に報いるためにも、適切な「値決め」がますます重要になっています。

 次の3つのポイントを踏まえ、自社の値決めの方針についてあらためて考えてみましょう。

 (1)コストと利益を踏まえて価格を見直す

 (2)自社の「強み」を見つめ直す

 (3)値上げ等の交渉ではその根拠となる具体的なデータを提示する

税務:中小企業向け「賃上げ促進税制」のポイント

 企業の賃上げを応援する税制として設けられた「賃上げ促進税制」。従業員に対する給与等の支給額(雇用者給与等支給額)を前年度よりも一定割合増加させた場合に、賃上げ額の一部を法人税から控除できる制度です。

 令和6年度税制改正により、適用期限が3年延長され、最大控除率もアップ。加えて中小企業については、赤字であった、もしくは大きな黒字ではなかったために税額控除をしきれなかった場合に、最長5年間、未控除額を繰り越せるようになりました。

 同税制の適用を受ける前に、次のことを確認しておきましょう。

(1)ベースとなる前年度の雇用者給与等支給額を把握する

(2)直近の経営状況を踏まえ、①どの程度の賃上げが可能か②その際、何%の税額控除を受けられるか――を確認する

(3)賃上げの原資となる利益(限界利益)を確保する方法を検討する

労務:中小企業のためのメンタルヘルスケアの基礎知識

 5月から6月にかけては、季節の変わり目とも相まって、メンタルヘルスの不調を訴える人が多くなるシーズンです。1人ひとりの従業員に本来の力を発揮してもらうには、企業におけるメンタル面での健康を守る取り組み(メンタルヘルスケア)が大切です。

 メンタルヘルスケアとは、すべての働く人が健やかに、いきいきと働けるような気配りと援助をすることと、その活動が円滑に実践される仕組みづくりのことをいいます。

 メンタルヘルスケアの第一歩は、従業員自身にメンタル面のセルフケアに取り組んでもらうことです。従業員がメンタルヘルスの変化に気づき、セルフケアに取り組むきっかけの1つとして「ストレスチェック」があります。積極的な活用を検討しましょう。

 また、メンタルヘルスの異変を自覚した従業員をケアできるよう、①専門家を活用する②相談しやすい環境を整える――など、社内の体制づくりも大切になります。

事務所通信4月号

税務:所得税・住民税の「定額減税」のポイント

   令和6年度税制改正により、6月から納税者(合計所得金額1,805万円以下の給与所得者と個人事業主等)と、その配偶者を含む扶養親族1人につき4万円(所得税3万円・住民税1万円)の定額減税が行われます。

 所得税については、6月1日以後最初の給与等の源泉徴収される所得税から減税額を控除。控除しきれない場合は、減税額に到達するまでそれ以後の給与等の支給時に順次控除する仕組みのため、給与計算の担当者は注意が必要です。

 給与計算担当者は、従業員から提出された「扶養控除等申告書」「源泉徴収に係る申告書」を基に、減税額の計算対象となる配偶者や扶養親族を正しく把握する必要があります。これらの申告書から把握できない配偶者等については、年末調整で調整します。

労務:従業員の残業時間を正しく把握していますか?

   令和2年から行われている中小企業の時間外労働(残業)の上限規制。令和6年4月1日から建設業・自動車運転の業務・医師に対する猶予が終了し、「残業」への社会の見方がより厳しくなると予想されます。これを機に自社の残業の状況を再確認し、適切な労務管理に努めましょう。

 そもそも労働時間は、①所定労働時間②法定内残業時間③法定外残業時間――の3種類に分けられます。このうち③法定外残業時間は、原則として「月45時間、年360時間以内」に抑えなければなりません。残業を減らすための取り組みとしては、次のようなものが挙げられます。

○残業の事前承認制の導入

○変形労働時間制の採用

○事業・製品・商品構成の見直し

○新たな技術の積極的な導入

法務:令和6年4月1日から義務化! 相続で不動産を取得したら登記が必要です

 相続によって取得した不動産(土地・建物)の登記(相続登記)がされないまま相続が繰り返され、登記簿上の所有者がわからない「所有者不明土地」が全国で増加しています。その発生予防の一助として、令和6年4月1日から、相続した不動産について不動産登記簿の名義を変更する「相続登記」が義務化されます。

(1)相続人は、不動産を相続(遺言を含む)で取得したことを知った日から3年以内に、法務局に登記の申請をしなければなりません。

(2)令和6年4月1日より前に相続した不動産についても、未登記であれば、令和9年3月31日までに相続登記をする必要があります。

(3)「正当な理由」がないにもかかわらず、相続登記をしない場合には、10万円以下の過料が科される可能性があります。

なお、相続登記の期限までに遺産分割をまとめることが困難なときは、令和6年4月1日から新たにスタートする「相続人申告登記」という手続きを活用すると良いでしょう。

事務所通信3月号

会計:決算の準備はお早めに! スムーズな決算のための最終確認事項

 3月は企業の決算が集中する月です。決算を迎える企業は、決算日までに次のような点を確認しておきましょう。

○請求を再確認する:売掛金の計上漏れがないか、納品書控・得意先元帳・売掛金台帳等の記録を確認する。

○滞留・不良債権への対応を検討する:滞留・不良債権化している売掛金等は、貸倒損失や貸倒引当金を計上できる条件を満たしているかどうかチェックする。

○不良在庫は決算日までに処分する:セール等による値引販売や廃棄処理、買取業者への依頼等によって処分することを検討する。

○固定資産を確認する:①実際に事業用として稼働しているか②少額減価償却資産の特例が適用できるか③その固定資産の修理は修繕費か――を確認する。

○仮払金等を精算する:残高がある場合、精算して適切な勘定科目に振り替える。

経営:「お金がない!」にさよなら 「キャッシュ・フロー経営」で安心の経営を!

 手元により多くのキャッシュ(現金・預金)を残すことを重視する経営を「キャッシュ・フロー経営」といいます。資金の入りを「多く・早く」、資金の出を「少なく・遅く」することがポイントです。自社の仕入から販売、支払い、回収までのサイクルを次の指標で確認することが重要です。
○棚卸資産回転期間(日)=棚卸資産÷純売上高×365
   ※原材料・商品を仕入れてから販売するまでの期間。

○売上債権回転期間(日)=売上債権÷純売上高×365
   ※製品・商品を販売してから代金を回収するまでの期間。

○買入債務(支払基準)回転期間(日)=買入債務÷仕入代金支払高×365
   ※原材料・商品を仕入れてから代金を支払うまでの期間。

○必要運転資金回転期間(日)=(棚卸資産回転期間+売上債権回転期間)-買入債務回転期間
   ※仕入代金を支払ってから販売した代金を回収するまでの期間。

「必要運転資金回転期間」は、資金調達が必要な期間です。この期間を短くすることで資金の心配が減り、安心の経営につながります。

労務:令和6年4月からルールが変更に! 「労働条件」を従業員にはっきりと伝えていますか?

 新たな従業員の雇用や、有期雇用の従業員との契約更新の際に義務付けられている「労働条件の明示」。そのルールが、令和6年4月1日から変わります。令和6年4月1日以降、新たに書面で明示すべき事項は次の通りです。改正点の確認とともに、自社の労働条件およびその明示の方法を見直してみましょう。

(1)すべての従業員に対する明示事項:就業場所・業務の変更の範囲

(2)有期雇用の従業員に対する明示事項:
①有期労働契約の更新の上限
②無期転換申込機会
③無期転換後の労働条件

事務所通信2月号

経営:商売繁盛の2つのカナメ!「日々の記帳」と「月次決算」

 商売繁盛の「カナメ(要)」となるのが、「日々の記帳(毎日、会社で会計データ〈仕訳〉を入力すること)」と、年12回の「月次決算」です。
 日々の記帳は、①自社を守るための証拠づくり②経営者自身への報告(自己報告)── という2つの側面があります。日々の記帳が習慣になっているか否かで、お金の使い方や行動にも大きな差が出てきます。日々の記帳を良い習慣としてしっかり根付かせましょう。
 月次決算とは、「経営者自身が、毎月の業績を翌月早々に把握でき、かつ、活用できる状態」を指します。そのためには、発生主義で正しく月次決算を行い、前月の取引にかかった費用/得た収益を正確に把握することが何よりも重要になります。
 これらの前提は、①正確な日々の記帳をサポートする法令に準拠した会計システムを活用すること②会計事務所のチェック・助言を毎月受けること(月次巡回監査)── です。
 一緒に商売繁盛を目指しましょう。

経営:お金の流れが一目瞭然 「キャッシュ・フロー計算書」を見てみよう!

 会社の経営にとってキャッシュ(現金・預金)は、人間の体でいう血液に相当します。人が貧血になれば倒れてしまうように、会社のキャッシュが少なくなれば企業活動は停滞し、倒産という事態にもなりかねません。会社のキャッシュを増やすことは、経営を安定させ、将来への投資を自己資金で行えるなど経営の自由度が増すことにもつながります。
 「キャッシュがきちんと生み出されているか」は、キャッシュ・フロー計算書で確認しましょう。「Ⅰ 営業活動によるキャッシュ・フロー」「Ⅱ 投資活動によるキャッシュ・フロー」「Ⅲ 財務活動によるキャッシュ・フロー」の3つに分類され、それぞれの活動でキャッシュがどれだけ増減し、最終的にどれだけ残ったのかが表示されます。
 自社のキャッシュ・フロー計算書を見ながら、あらためて最近の経営状況を思い返し、今期、来期の資金計画に活かしてみましょう。

税務:個人事業者のための 令和5年分消費税・所得税の確定申告の注意点

 個人事業者の消費税や所得税の確定申告の時期になりました。免税事業者からインボイス発行事業者となった個人事業者は、今年から消費税の確定申告・納税も必要になります。その際、免税・課税事業者の期間を区分することが重要です。業種にかかわらず売上税額の一律2割を納税額とする特例措置(2割特例)を適用することも検討しましょう。
 所得税の確定申告で注意しなければならないのは、家事費と家事関連費です。家事費は業務に関係のない生活(プライベート)のための支出で、必要経費として認められません。したがって、仕入代金・広告宣伝費・従業員給与など、業務上の必要経費と家事費とはしっかり区分しておく必要があります。
 家事関連費は、必要経費と家事費が混在した支出です。例えば、店舗併用住宅の水道光熱費や家賃、火災保険料、業務と生活において利用する自動車の諸費用等が該当します。家事関連費については、使用時間や使用頻度などの合理的な方法によって按分し、業務上必要な部分を明確にすることで、その部分が必要経費として認められます。

事務所通信1月号

トピック:2024年はこんな年! 世の中の動きをチェックしよう

 2024年には、会社の経営に関わるさまざまな制度改正が予定されています。例えば、次のような制度改正があります。
①電子取引データの電子保存の本格義務化(1月1日~)
②暦年課税制度・相続時精算課税制度の見直し(1月1日~)
③建設業・自動車運転の業務・医師の残業規制開始(4月1日~)
④相続登記の義務化(4月1日~)
⑤フリーランス保護新法施行(秋ごろまでに施行予定)
⑥社会保険の適用拡大(10月1日~)
自社で対応が必要となるものを事前に把握し、準備を進めておきましょう。

経営:黒字経営への道しるべ(第6回/最終回) 自社の「必要利益」をしっかり認識しよう

 「経常利益」は、限界利益から固定費を引いた残りで、経営の総合的な成果、いわば社長の「最終成績」ともいえる数字です。経常利益がマイナスであれば、慢性的な資金不足を引き起こしかねません。また、たとえ経常利益がプラスでも、自己資本の蓄積が少ない場合は、借入金を返済するための元本等となるため、キャッシュとして残るまでには至りません。法人税等の納税資金を準備する必要もあります。こうしたことから、安定した経営を継続するために、毎期、黒字化を目指していくことは非常に大事です。
 黒字決算を実現するには、「PDCAサイクル」と呼ばれる業績管理の実践が必要になります。それは、期首に立てた計画(Plan)に沿って行動計画を実行(Do)し、計画と実績の差異を検証(Check)し、課題や変化への対策を考え実践(Action)すること――です。
 PDCAサイクルの前提となるのが、正確な月次決算です。月次決算を行って変動損益計算書を確認していると、早期に課題を発見し、打ち手を検討することが可能になります。

経営:これから増える? 「ペポルインボイス」って何?

 インボイス制度の開始後、PDFをはじめとした電子データによる「電子インボイス」を受け取っている会社も多いことでしょう。電子インボイスの一種で、世界各国はもちろん、日本でも現在導入が進んでいる「ペポルインボイス」。その主な特徴は次のとおりです。
〇送信/受信側が同じシステムを利用していなくてもデータのやりとりが可能
〇発行者名・品名・取引金額等のインボイスの記載事項について、受信したシステムでその内容を正確に読み込めるため、請求書の確認・仕訳入力が楽になる
 ペポルインボイスの送受信には、「ペポルサービスプロバイダー」に認定されている企業と契約を結ぶ必要があります。その点、TKCは、「ペポルサービスプロバイダー」に国内で初となるタイミングで認定されています。また、TKCのFXシリーズ・SXシリーズを利用している場合には、標準機能でペポルインボイスの送受信が可能です(送信機能は今後順次搭載予定)。
 ペポルインボイスの利用を検討されている場合は、当事務所にご相談ください。


2023年

事務所通信12月号

経営:黒字経営への道しるべ(第5回)適切な労働分配を考える

自社が稼いだ付加価値(限界利益)に対して、人件費(賃金、給与、賞与、役員報酬、法定福利費等)が占める割合を「労働分配率」といいます。人手不足等で賃上げの機運が高まる中、適切な労働分配率の管理はますます重要になっています。

人件費の原則は、「労働分配率をおさえながら1人当たりの人件費を高く」することです。ただし人件費を増やしすぎれば赤字に転落するおそれもあるため、自社に合った適切な労働分配率・給与水準を保つことは大切です。従業員にとって納得感のある給与水準とするには、①年収の時給換算で生産性アップ②柔軟な勤務・給与体系の設定③利益を公平に分配するルールづくり――といった具体策があります。

適切な労働分配率の管理とともに、原資となる限界利益を増やす取り組みも重要です。

税務:令和5年分「年末調整申告書」作成上の注意点

年末調整事務は、従業員が提出した基礎控除申告書、扶養控除等申告書などの「年末調整申告書」に基づいて行うため、従業員に記載上の注意点を事前によく説明しましょう。

本年中の従業員の親族の異動(結婚、出産、家族の就職、離婚、死別など)について確認し、訂正等があれば、再度、扶養控除等申告書の提出を受けます。

配偶者控除等や扶養控除等を受ける従業員には、配偶者や子どもの収入(所得の見積額)の誤りや記載もれがないよう、よく確認するように注意喚起しましょう。

また、年末調整事務の電子化も検討してみましょう。電子化によって、給与事務担当者と従業員双方の事務負担を減らし、会社全体の生産性を向上させることができます。

労務:押さえておきたい! 外国人材活用の基礎知識

訪日観光客の対応や人手不足の解消が期待される外国人材の活用。外国人(日本国籍を持たない人)には、入国の目的に応じて「在留資格」が与えられており、その資格の範囲内でのみ、就労することが可能となっています。

また、中長期で日本に在留する外国人には、多くの場合「在留カード」が発行されています。外国人材の採用時には、同カード表面の「在留資格」欄や「就労制限の有無」欄、「在留期間」欄を必ず確認しましょう。

なお、外国人材に支払った給与等は国内源泉所得に該当し、所得税と住民税の課税対象になります。住民税については、前年に給与所得がある場合、日本人従業員と同様に特別徴収(給与からの天引き)を行うことになります。未納があると、在留期間の更新申請等が許可されない場合があります。国籍を問わず、適正な納税が大事です。


事務所通信11月号

労務:正しく知って「働き控え」の見直しを!「年収の壁」をおさらいしよう

最低賃金が全国平均1,000円台に引き上げられる中、「年収の壁」は、従業員はもちろん、経営者にとっても大きな関心事の1つです。

所得税の課税対象となり、配偶者控除・扶養控除の対象外になる「103万円の壁」、社会保険の加入対象となる「106万円の壁」、国民年金・国民健康保険の加入対象となる「130万円の壁」――。これら3つの「年収の壁」についてよく知り、個々人に合った働き方を選べるようになれば、従業員にとっては世帯年収のアップが、経営者にとっては人手不足解消が期待できます。

「年収の壁」にとらわれすぎない働き方を、従業員と一緒に検討してみましょう。

消費税:こんなときどうする? インボイスの処理についての素朴な疑問

インボイス制度では、仕入税額控除を受けるためには、原則として一定事項を記載した帳簿と仕入先から受け取ったインボイスの保存が必要です。一方で、実務では、次のようなケースもありますので対応を確認しましょう。

○インボイスを発行できない免税事業者等からの課税仕入れであっても、令和8年9月30日までは、消費税額の80%相当額について仕入税額控除が受けられます。

○従業員の通勤手当・旅費交通費等において、賃金規程等に基づいて従業員に支給する通勤手当、出張旅費規程等に基づいて支給する出張旅費・宿泊費・日当は、一定事項を記載した帳簿のみの保存で仕入税額控除が認められます。

○旅費交通費や備品購入等における従業員の立替払いの精算については、原則として「会社宛てのインボイス」が必要です。「従業員宛てのインボイス」の場合は、従業員が作成した「立替金精算書」等も合わせて保存することが求められます。

税務:令和6年から変わる 贈与税の「暦年課税制度」

贈与税の課税方法の1つである「暦年課税制度」は、1月1日から12月31日までの1年間に贈与された財産の合計額から、基礎控除額110万円を差し引いた価格に課税されるものです。直系尊属(父母や祖父等)から18歳以上の子や孫等への贈与は、一般の贈与よりも税率が軽減されています。

同制度では、相続等によって財産を取得した人が被相続人の死亡の日からさかのぼって3年の間に取得した財産について、相続税の課税価格に加算されます(相続前贈与の加算)。

令和6年1月1日以後の贈与から、この加算期間が3年から7年に延長されます。加算期間の延長によって相続時に課税される相続財産が増加するため、相続時の税負担が大きくなることが見込まれます。同制度の活用は早めに検討しましょう。


事務所通信10月号

消費税:インボイス制度開始! 10月1日以後の返品、値引き等への対応に注意!

売上代金の決済時に、取引先(買手)が振込手数料相当額を差し引いた金額を振り込むことがあります。この場合の振込手数料相当額について、売手は「雑費」か「売上値引き」として処理することが一般的です。
しかし、インボイス制度開始後に「雑費」として処理すると、原則として金融機関等からインボイスを受け取る必要があり、事務負担が増えることになります。
一方、「売上値引き」として処理すると、税込金額1万円未満の売上に係る対価の返還等については返還インボイスの発行が免除されるため、事務負担が軽減されます。
また、会計上は「雑費」として処理し、消費税法上は「売上値引き」として処理することも認められます。この場合、振込手数料相当額について売上のマイナス処理を行わずに返還インボイスの発行が免除されます。

経営:制度対応だけではもったいない!「経営データの電子化」に取り組もう

令和5年12月31日、電子帳簿保存法による電子取引データの保存についての「宥恕措置」が終了します。
現在は、電子メール等で送受信した請求書や見積書等の電子取引データ(PDF等)をプリントアウトして保存し、税務調査等で提示・提出できるようにしていれば問題ありませんが、令和6年1月1日からは紙による保存は認められず、電子データによる保存が義務付けられることとなります。原則として全ての法人・個人事業者が適用対象です。
この制度改正を大きな機会として、紙で受け取った書類も全てスキャンして電子で保存する体制へと大きく切り替え、「経営データの電子化」に社内全体で取り組みましょう。
TKCの自計化システム「FXシリーズ」の「証憑保存機能」を利用すれば、電子帳簿保存法の保存要件を満たして保存することができます。また、スマートフォンで紙の領収書等の証憑を撮影して、電子データとして保存することも簡単です。

経営:黒字経営への道しるべ(第4回)固定費管理は経営者の腕の見せどころ

売上高の増減にかかわらず、会社の維持に必要となる「固定費」をどのように管理するかは、経営者の腕の見せどころです。「人件費」や「地代家賃」、「水道光熱費」など、まずは自社の費用の中で固定費になるものを洗い出し、「何が・誰が管理可能なのか」「金額に見合った効果を得られているか」「稼働率を上げられないか」という3つの視点から、固定費の変化を確認しましょう。
固定費には、自社の努力で短期的に管理可能(削減が可能)なものと、短期的には管理不能(削減が困難)なものがあります。また、社長だからこそ管理できるものと、部下社員でも管理可能なものとがあることにも留意しましょう。
固定費は限界利益を稼ぐための支出ともいえることから、改善について考える際は、単純なコストカットではなく「かけた費用に見合う効果が得られているか」という視点も重要です。
生産性向上という観点から、自社の機械や設備等の稼働率を高めて有効活用する――という視点も、固定費の管理には有効になります。